中小企業向けコンサルティング銘柄:事業継承問題・DX化に挑む各社の戦略と支援モデル

後継者不足による事業承継、デジタル化の遅れ、そして深刻化する人材不足。これらは現代の日本、特に経済の屋台骨である中小企業が直面する、避けては通れない経営課題です。
かつては個別の問題として捉えられていましたが、現在ではこれらが複雑に絡み合い、企業の持続的成長を左右する重要なテーマとなっています。
こうした状況を背景に、企業の変革を支援するコンサルティング業界の役割は、ますます重要性を増しています。
近年のトレンドは、単なる経営戦略の助言に留まりません。
M&A仲介による事業の引き継ぎ、具体的なDXツールの導入支援、リスキリングを目的とした人材育成まで、企業の課題解決に深く踏み込んだ「伴走型」のサービスが主流になりつつあります。
本記事では、こうした中小企業向けコンサルティング市場で独自の強みを持つ企業群に焦点を当てます。
M&A仲介、DX支援、人材育成など、各社がどのような戦略で社会課題の解決と自社の成長を目指しているのか、その取り組みに迫ります。
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株式会社日本M&Aセンターホールディングスは、1991年に設立されたM&A仲介のリーディングカンパニーです。
全国の地域金融機関や会計事務所との広範なネットワークを強みとし、後継者不在などに悩む中堅・中小企業の事業承継を支援しています。
M&Aの仲介業務を主たる事業としており、譲渡企業・譲受企業の双方に対してサービスを提供しています。
同社は、M&Aの全プロセスをワンストップで提供し、案件の探索から最終契約まで一貫して支援します。
国内事業に留まらず、シンガポールなどASEAN地域にも拠点を設け、クロスボーダーM&Aも積極的に展開。
さらに、TOKYO PRO MarketのJ-Adviserとして、企業の新たな成長ステージへの移行をサポートする役割も担っています。
中小企業の事業承継という社会課題を背景に、同社の事業領域には継続的な需要が見込まれます。
また、海外展開やTOKYO PRO Market支援といった多角的な取り組みは、既存のM&A仲介事業に加え、新たなサービス領域を確立する動きと見ることができます。
一方で、事業リスクとして、案件の長期化や競合激化による価格下落などが挙げられます。
また、コンサルタントの専門性や倫理観に事業が大きく依存するため、優秀な人材の確保・育成と、強固なコンプライアンス体制の維持が持続的成長に不可欠です。
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1970年創業の船井総研ホールディングスは、中小企業を主な対象とする経営コンサルティング会社です。
経営コンサル・ロジスティクス・デジタルソリューションの3事業を柱に顧客の成長を支援。
特に、継続的な経営支援を行う「月次支援」や、特定のテーマを学ぶ「経営研究会」は、同社の特徴的なサービスと言えるでしょう。
同社の競争優位性は、特定の業界・業種に特化した専門性の高いコンサルタント集団を擁している点にあります。
実践的ノウハウで顧客の業績向上に直結する提案を行うほか、近年はHRテックやDX支援にも注力。
時代のニーズに合わせたサービスの多角化で成長を目指します。
中小企業におけるDX化の遅れや人材不足は、日本経済全体の構造的な課題であり、同社のコンサルティング需要は今後も底堅いと考えられます。
特に、AIやクラウドを活用したデジタルソリューション事業は、今後の成長を牽引する重要な要素となるでしょう。
既存のコンサルティング事業とのシナジーを生み出すことで、更なる市場シェアの拡大が期待されます。
一方、コンサルティング業界は競争が厳しくなると予想されており、また大規模災害やパンデミックにより業績に影響を与える可能性など、事業を取り巻くリスクも存在します。
また、コンサルタント個人のスキルに依存する部分も大きいため、優秀な人材の獲得と育成、そして定着が、企業としての競争力を維持する上で不可欠な要素となります。
>>船井総研ホールディングスについてもっと詳しく:なぜ「船井流コンサルティング」は中小企業の経営者に刺さるのか?成功を支える五つの戦略とは
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株式会社インソースは、2002年に設立された人材育成支援企業です。
講師派遣型のオーダーメイド研修と、誰でも参加できる公開講座を二本柱とし、民間企業から官公庁まで幅広い顧客層にサービスを提供しています。
対面形式に加え、オンライン研修にも対応できる柔軟性が、同社の強みの一つとなっています。
同社のサービスは、単なる研修の提供に留まりません。
自社開発のLMS「Leaf」を通じて、人事部門のIT化を支援しています。
Leafは同社の研修・教育運営ノウハウが積み上げられており、人事部門の効率化や効果的な人材育成の仕組みづくりをサポートしています。
近年は、動画教材の制作や地方創生に関連するサービスも手掛け、事業領域を拡大しています。
現代のビジネス環境において、リスキリングやDX人材の育成は多くの企業にとって重要な課題です。
こうした社会的ニーズは、同社にとって事業機会となり得ます。
特に、LMSの導入拡大は、継続的な収益が見込めるストック型ビジネスの強化に繋がるものと考えられます。
事業運営上のリスクとしては、経済環境の悪化による顧客の教育研修予算の削減や、研修におけるパラダイムシフトを起こすビジネスモデルでの他分野からの企業の参入が挙げられます。
最新の教育手法や技術を取り入れ、質の高いコンテンツを維持・向上させることが持続的成長には不可欠です。
>>インソースについてもっと詳しく:リスキリング市場を攻略――インソースに学ぶ「教育サービス」の新戦略
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株式会社ストライクは、1997年に設立されたM&A仲介専門企業です。
公認会計士や税理士が主体となって設立された背景から、財務や税務に関する高度な専門知識を活かしたサービス提供を強みとしています。
同社は、譲渡企業と買収候補企業の双方と契約を結び、中立的な立場からM&Aの成立を支援します。
同社の際立った特徴は、インターネットを活用したM&Aマッチングプラットフォーム「SMART」の運営です。
このプラットフォームを通じて、全国の事業承継や事業拡大のニーズを効率的に結びつけています。
案件の探索から、企業評価、交渉、そして最終契約の締結に至るまで、M&Aに関するあらゆるプロセスをワンストップでサポートする体制を構築しています。
日本が抱える後継者不足という社会課題を背景に、中小企業のM&Aによる事業承継のニーズは、今後ますます高まることが予想されます。
同社は、インターネット上のマッチングサイト活用やM&Aコンサルタントの専門性向上・人材育成を通じ、マッチング手法とサービス品質の向上を図る方針です。
これらの取り組みが、業績拡大の目標達成に不可欠であると認識しています。
一方で、M&A仲介市場は競合が増加しており、差別化を図っていく必要があります。
また、景気の変動は企業のM&Aに対する意欲に影響を及ぼす可能性があります。
専門性の高いコンサルタントの確保と育成は、サービスの質を維持し、成長を続けるための重要な課題です。
>>ストライクについてもっと詳しく:レッドオーシャン化するM&A仲介――それでもストライクが伸びている理由
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株式会社ビジネスブレイン太田昭和(BBS)は、1967年に創業した歴史あるコンサルティングファームです。
同社は「経営会計」を核とし、コンサルティングからシステムの設計・開発、さらにはBPOまで、企業の経営管理領域をワンストップで支援する独自のポジションを築いています。
同社の強みは、会計領域における深い知見と、それを具現化するシステム開発力にあります。
製品・ソリューションとして「BizForecast」シリーズなどを提供しており、顧客企業の経営課題解決を支援しています。
近年では、これまでの知見にAIやRPAといった最新技術を組み合わせた「Hybrid BPO」サービスを展開し、バックオフィス業務のDXを推進している点が特徴的です。
高まる経営管理やバックオフィス効率化のニーズに対し、BBSはコンサルからシステム導入、業務運用までを一気通貫で提供しており、この総合力が同社の強みとなっています。
特にDXの流れを捉え、RPAやAI-OCRを活用したHybrid BPOサービスは、マネージメントサービス事業の戦略として展開されており、BPO領域の拡大を目指しています。
同社の事業上のリスクとしては、大規模開発の採算管理や景気変動によるIT投資意欲の減退が挙げられます。
また、企業の根幹を担うため、技術革新への対応と専門人材の確保・育成が持続的成長に不可欠です。
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1989年設立の山田コンサルティンググループは、独立系の総合コンサルティングファームです。
特に事業再生分野では、コロナ禍や外部環境を背景にニーズが増加傾向にあり、蓄積したノウハウと人材を活用し、金融機関との連携も進めています。
事業再生で培った知見を活かし、現在ではM&Aアドバイザリーや事業承継、海外進出支援など、企業のライフステージに応じた多様なサービスを展開しています。
同社は、会計・財務・税務・法務の専門家が多数在籍しており、財務・会計に関する深い専門性に強みを持っています。
これを基盤に、顧客企業の経営課題に対して、実効性の高い具体的な解決策を提示し、その実行までをハンズオンで支援するスタイルを貫いています。
アジアにも拠点を持ち、グローバルな視点でのコンサルティングも強みです。
同社は、景気変動に左右されにくい事業再生ニーズが安定した事業基盤を形成しています。
ここで培った信頼と実績をテコに、成長戦略やM&A支援へとサービスを拡充。グローバル化する顧客ニーズを捉えるクロスボーダー案件への対応力は、今後の事業展開における重要な要素と位置づけられています。
一方で、コンサルティングサービスは、個々のコンサルタントの専門性や経験に依存する側面が強いビジネスです。
そのため、優秀な人材の確保と育成、長期的なキャリア形成の支援が、企業の持続的な成長にとって不可欠な課題となります。
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1957年創業のタナベコンサルティンググループは、経営コンサルティングの草分け的存在です。
全国の中堅企業を中心に、大企業、中規模企業、行政・公共を対象に、顧客から最初に選ばれる「ファーストコールカンパニー」を数多く創造することを経営方針としています。
2022年10月には持株会社体制に移行し、グループ経営を強化しています。
同社のコンサルティングは、経営戦略の策定から、DX、M&A、HRに至るまで、企業経営のあらゆる側面を網羅しています。
全国の主要都市に拠点を持ち、地域に根差したきめ細やかなサービスを提供できる点が強みです。
また、経営者や幹部向けのセミナー、研究会を数多く主催し、顧客との長期的なリレーションを構築しています。
企業の持続的成長には、変化に対応するための絶え間ない変革が不可欠です。同社が掲げる「One Only」の価値創造支援は、競争が激化する市場において、企業が独自のポジションを確立するための強力なサポートとなるでしょう。
特に、中堅企業のDX化や事業承継といった現代的な経営課題に対するソリューション提供は、今後の大きな成長機会と考えられます。
一方で、人材流出や情報管理といった内部リスクに加え、業界の競争激化も事業上の課題です。
そのため、独自のノウハウを磨き、選ばれ続けるブランド価値を維持・向上させることが不可欠と言えるでしょう。